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しんていきららざか
新訂雲母阪
直木 三十五
「文藝春秋」文藝春秋、1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,792 字 · 12 页
一
一
「本当にそうか。」
と、聞かれると、そうで無いとは云え無い。く、とは確に聞いたのだから、これは断言できる。然し次の、る、はそう云ったような、云わないような、何うも明かで無いが、自分が唯一の証人で大勢の中で、美しい寡婦の悄然としている前で
「くる、と確に聞いた。」
と、云った言葉を
「本当か。」
と、念を押されると、今更、いや一寸まってくれ、もう一度、耳に聞いてみるからとも云え無い。それに死人に口無し
「くる、と確に聞いた。」
と、断言したって、それは一寸良心が二三分間疑を挟んでみるだけで、お俊始め、列座の面々はきっと自分の手柄に感謝するにちがい無い。だから
「本当ですとも。」
と、云い切ってしまった。
「来馬では無かろうか。」
と、一人が一人にこっそり耳打した。そしてその一人は頷いた。
「君が、何んと声をかけた時に、くる、と云ったのだ。」
と、もし聞く人があったなら、来馬への懸疑はいくらか薄くなったかも知れぬが
「対手は? 手懸りは?」
とばかりしか考えていない若侍共に、そうした探偵法は気がつかなかった。そして、耳打から、小声になり、一番思慮の無い男が
「来馬で無いか。