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まさことまき

方子と末起

小栗 虫太郎

「週刊朝日読物号」朝日新聞社、1938(昭和13)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,517 字 · 24 页

青空文庫

それには、末起でさえも渇仰をおぼえ、いまでも、母といえばその姿がうかんでくる。

が、気がつくと……祖母の※(「目+爭」、第3水準1-88-85)らかれた眼が前方の窓硝子にうつっている。瞬かない、眼にはいっぱいに涙がたまり、見てよ、はやく末起と、叫びそうなものが無音のうちに拡がってくる。

「これ、お祖母さま?」

訊いたとき、眼は精根尽きたか閉じられてしまった。涙は頬を濡らして滂沱と流れ、拭かれるとまた※(「目+爭」、第3水準1-88-85)らき、おなじことをくりかえすのだった。

たしかに、祖母がこの写真に、要求しているものがある※(感嘆符疑問符、1-8-78) しかし、それが母への追憶だけとすれば、詰まるところは何事でもないわけだ。それから、末起が失望気味ながらページをくるとまたはじまった。

今度は梳き手がひとり背後にいて、荒歯櫛で解きそろえているところだった。してみると、祖母がいまなにごとを訴えているのか――末起にはやっと分ったような気がした。

どうした理由か、末起に毛巻の丸髷を結えというのだ。

二、不思議の国のアリス

「お祖母さま、これでいいこと……」