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りょかくきじけん
旅客機事件
大庭 武年
「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页
然し一体自殺するのに落下傘を持ってする人があるでしょうか?」
「なに、第三者が其の男のすぐ後から落下傘を故あって投げたと言えば言えない事はなかろう。その意味から第二の他殺説も有力になるのだ。即ち突き落しておいて、すぐ後から落下傘を落して置くと言う事も、十分考えられ得るからね」
――検事の眼には、ありありと、当時の情況がうつる気がするのであった。練習機から見た時には乗客二人は生きていた。がそれから僅か飛んだN原には既に綿井が墜死していた。誰れにも、その僅かの間に、乗客二人を相手とした大格闘が行われたものとは推定され得なかった。乗客二名はどうせ団結していたろうし――。だから、どうしても綿井の死が先であるらしく思われた。もし自殺であるなら、秀岡が知らないでいる間に行われ得るし、他殺にしろ、彼を一人秀岡が知らぬ間に、便所におびき寄せ、そこから突き落すと言う事も不可能事ではない。孰れにせよ、兇行は邪魔者がいなくなってから、油断をみすまして一撃のもとに行われたものである事は明瞭である。邪魔者がいて、どうして阿麼手際よい殺害振りが出来るであろうか。
「然し検事殿」