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りょかくきじけん
旅客機事件
大庭 武年
「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,209 字 · 21 页
そうしている間に、H署には、次のような情報が蒐集され、又、細密な物的証拠品が発見されてきていた。そしてそれは、事件を大きく「絞り開け」すると重要な材料となっていた。即ち第一に、機体内を綿密に精査して帰った係官は、総てを綜合して、先ず次の如く報告した。
「――機体内に兇器とおぼしき物遺留されず。又被害者の所持品中の折鞄は開放されて打ち捨ててあり、在中品は二三の書類を残して全部抜き去られ所在不明。尚便所内、窓は開放せられ、そこに取りかたづけられてありし座褥型落下傘一個紛失」そして最後に最も重大な証拠品たるべき一枚のもみくちゃになった紙片――客室内装備の通話用の紙片――が発見された事がつけ加えてあった。即ちそれには被害者自身の手で、次の如く走り書きされてあったのである。「三枝と言う此の機の機関士が、私を殺すと脅迫している。あなたは同乗のよしみで、私を守って下さい。お礼はしますから」
次に集った情報とはどんなものであったろう。即ち、
一、綿井茂一の屍体、N原の一隅に発見さる。飛行機より墜死したもの。附近に未開の儘の落下傘発見。屍体には所持品(自分の持物以外)全然無し。