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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页
旗本退屈男
一
一
――時刻は宵の五ツ前。
――場所は吉原仲之町。
それも江戸の泰平が今絶頂という元禄さ中の仲之町の、ちらりほらりと花の便りが、きのう今日あたりから立ちそめかけた春の宵の五ツ前でしたから、無論嫖客は出盛り時です。
だのに突如として色里に野暮な叫び声があがりました。
「待て、待て、待たぬかッ。うぬも二本差しなら、売られた喧嘩を買わずに、逃げて帰る卑怯者があるかッ。さ! 抜けッ、抜けッ。抜かぬかッ」
それもどうやら四十過ぎた分別盛りらしいのを筆頭に、何れも肩のいかつい二本差しが四人して、たったひとりを追いかけながら、無理無体に野暮な喧嘩を仕掛けているらしい様子でしたから、どう見てもあまりぞっとしない話でしたが、売られた方ももうそうなったならば、いっそ男らしく抜けばいいのにと思われるのに、よくよく見るとこれが無理もないことでした。――年はよくとって十八か九、どこか名のあるお大名の小姓勤めでもしているとみえて、普通ならばもうとっくに元服していなければならない年頃と思われるのに、まだふっさりとした前髪立ちの若衆なのです。
だからというわけでもあるまいが、なにしろ一方は見るからに剣豪らしいのが、それも四人連れでしたので、どう間違ったにしても不覚を取る気遣いはないという自信があったものか、中でも一番人を斬りたくてうずつい