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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页
しかもその早いこと、早いこと、燕のように身をひるがえしながら、丁度行きついた境内へ小走りに駈け込むと、ウチワ太鼓の唸りさざめいている間を、あちらにくぐりこちらにくぐりぬけて、あッと思ったそのまに、もうどこかへ姿を消しました。
「わははは、剣道修業の者ならば、先ず免許皆伝以上の心眼じゃ。苦手と看破って逃げおったな。いや、よいよい、この境内へ追い込んでおかば、またお目にかかる事もあろうわい。――こりゃ、坊主、坊主」
勿体らしく衣の袖をかき合せながら、むらがり集っている講中信者の間をかいくぐって、並び宿坊の方へ境内を急いでいた雛僧を見つけると、まことに言いようもなく鷹揚でした。
「有難く心得ろ。江戸への土産に見物してつかわすぞ。案内せい」
「滅相な、当霊場は見物なぞする所ではござりませぬ。御信心ならばあちらが本堂、こちらが御祖師堂、その手前が参籠所でござります。御勝手になされませ」
剣もほろろにはねつけた気の強さ! 無理もない、聖日蓮が波木井郷の豪族、波木井実長の勧請もだし難く、文永十一年この一廓に大法華の教旗をひるがえしてこのかた、弘法済世の法燈連綿としてここに四百年、教権の広大もさることながら、江戸宗家を初め紀、尾、水の御三家が並々ならぬ信仰を寄せているゆえ、将軍家自らが令してこれに法格を与え、貫主は即ち十万石