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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页

青空文庫

三

若者に教えられて、御陣屋目ざしながら出かけようとしたとき、いかさま容子探りに行ったのが事実であるらしく、足掻きを早めながら駈け戻って来たのは先刻のあの二人です。パッタリ顔が合うや否や、馬上の二人は、退屈男の俄かに底気味わるく落ち付き払い出した姿をみとめて、ぎょッと色めき立ちました。だが、今はもう退屈男にとっては、名もなき陪臣の二人や三人、問題とするところでない。目ざす対手は、大隅、薩摩、日向三カ国の太守なる左近衛少将島津修理太夫です。

「びくびく致すな、その方共なぞ、もう眼中にないわ。七十三万石が対手ぞよ。行け、行け、早う帰って忠義つくせい」

皮肉にあしらいながら馬上の二人をやりすごしておくと、五十三次名うての街道をわがもの顔に、のっしのっしと道を急ぎました。

三

折からそよそよと街道は夕風立って、落日前のひと刻の茜色に染められた大空は、この時愈々のどかに冴え渡り、わが退屈男の向う傷も、愈々また凄艶に冴え渡って、いっそもううれしい位です。――行くほどに急ぐほどに、いかさまそこの大きな曲りを曲ってしまうと、すぐ目の前の街道ばたにそのお陣屋がのぞまれました。