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ひがさとちょう

日がさとちょう

小川 未明

「週刊朝日」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,703 字 · 8 页

青空文庫

」といって、村の娘たちは日がさを、たがいに奪い合いました。

そのうちに、一人の娘は、すこしでも長く自分がさしていたいと思って、日がさをさしながら、あちらへ逃げてゆきました。

「なんだずるい。自分ばかりさして、おれにも貸してくんなせい。」といって、他の一人の娘は、その後を追いかけました。

逃げた娘は、山道を日がさをさして駆けてゆきました。そのあとを他の娘たちは、追っていったのです。

きれいな日がさは、木の枝や、奪い合いのために切り株などにあたって、破れました。村の娘たちは、はじめてたいへんなことをしてしまったと驚いて、耳の遠い娘のところへきて、あやまりました。

彼女は、せっかく買ってきた大事な日がさの破れてしまったのを見て、ただぼんやりとしてしまいました。美しい日がさが破れると、もう村の娘たちは、用事がないといわぬばかりに、どこかへ散ってしまいました。

「見たとこばかりきれいでも、あんな紙ようなものが、なんの役にたとうかさ。」と、村の娘はあざ笑ったものもあります。

耳の遠い娘は、急にさびしくなりました。しかし、びっこの娘は、昔もいまも、やさしい心をもっていて、すこしも変わりはありませんでした。