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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

「もうお前も帰るだろう?」

庸之助は、銅貨の溜った籠の底を、ジャラジャラいわせながら、浩に聞いた。

「うん、帰る」

「俺の家へ来て見ないか? ここからじきだぜ」

「そうだなあ……。行っても好いけど、もう今夜はおそいや、また今度にしよう! ね?」

「駄目だよ、今度だって、そんなにいつも早く俺の体が空かねえよ。来て見なよ、すぐだからさ、いやかい? そうじゃなかろう、来いってばよ」

庸之助もしきりにすすめるし、浩も一度ぐらい彼のいるところを見るのも悪くはないと思った。で、浩は無邪気に彼と並んで歩き出した。広い通りを曲っては、先に庸之助を捉えたような裏道へ入り、また表通りに出ては、二人はかなり歩いた。

「じきだって、かなり遠いじゃあないか?」

「そりゃそうさ。坊っちゃんの考えることたあ、何でも違うよ」

庸之助は、ニヤニヤ快さそうな微笑を浮べて、チラリと浩の顔を見た。そしてまた黙って何を云っても返事をしないで歩きつづけた。裏通りで、解らないが、恐らく町名が異ったろうと思う頃、庸之助は人の家の間の、もっともっと穢くせまい小道に伴れ込んだ。浩はそろそろどこへ行くのだか、こうやって庸之助に引き廻されているのがいやになった。