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にほんのしょうらい

日本の将来

中谷 宇吉郎

「民族の自立」一時間文庫、新潮社、1953(昭和28)年12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,422 字 · 13 页

青空文庫

こういう水害から見たら、日本の水害などは、いくら大きくても、多寡がしれている。琵琶湖程度の水溜りが、ちょいちょい出来るくらいでなくては、水害として、世界に顔は出せないのである。ところが、こういう日本では一寸考えられないような狂暴な大河、即ちコロラド河も、今では、ボルダー・ダムの完成によって、完全に人力の統制下におかれ、水害の話は、もはや昔語りとなっている。そしてこの水害を起こした水は、現在百万キロワットの電力と化して、アメリカの工業に著しい寄与をしているのである。詳しい話は、前に『沙漠の征服』に書いたことがあるので略するが、アメリカにしても、またソ連にしても、現在世界で覇をとなえている国は、いずれも、自国の科学と技術との力によって、与えられた天然資源を、人力の統制下に置くことによって、禍を転じて福となし、その国力を培って来ているのである。

科学は魔術ではないから、無から有をつくることは出来ない。しかし有るものならばそれを人間生活に有利に利用することは出来る。日本の水資源などは科学の対象として、最も面白い問題であって、有り余るほどあるこの水を、水害とするか、水資源とするかは、国の科学力及び技術力の如何によってきまることである。