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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
萱笠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,885 字 · 27 页
どうしてそんな云い方をしたのか、自分でもまるでわからなかった、これまで相い似て恵まれない境遇にいた三人のうち、二人がそのように幸福に温ためられている、それに対する嫉みごころだろうか。自分ひとり取残されたくないという強がりだろうか。たしかにその二つの気持もあった、けれど、良人になる方がいま御馬前で戦っている、それを思うと今こそ生き甲斐を感ずる、そう云ったしんの言葉がもっとも強くあきつを打ったのである。亡き父が臨終に云った、「たとえ足軽でも戦場で討死ができれば本望だ、病気で死ぬとはいかにもくちおしい、おまえが男であって呉れたら、おれの代りに御奉公をして貰うのだが」遺言ともいうべきそのひと言が、しんの言葉といっしょに、あきつの心をはげしく打ったのだ。――いいえわたしだって。そういう気持がこみあげてきて深い考えもなく思わぬことを口にしてしまった、まったく思わぬことだったのである、云ってしまってからいけないと口を塞ぎたい気持だったが、しんと花世がすぐに声をあげた。
「まあそれは、あきつさま、あなたにもそういう方がおありでしたの」
「まあひどい方、わたしたちにまで内証にしていらっしゃるなんてあんまりですわ」