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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

10 勝川花菊の一生

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,120 字 · 15 页

青空文庫

両親は左団扇のホクホクだったのである。その妹娘の勝川花菊が、アンポンタンが長茄子と見た勝川のおばさんの前身だったのだ。

人気渡世の、盛りの花菊を、無理にも手生けにと所望し、金にあかして大家の御内儀としたのが廻船問屋石川佐兵衛だった。

中沢氏が湯川氏となって、遠州お前崎から働きものの二女を連れてくると、一躍して位置のかわってしまった金持の御内儀花菊さんは、働きものらしい娘を、手許で召使ってやろうと言出した。湯川老人もその店で仕事をもつようになったので、彼にいわせればなんとも致しかたがなかったのだ。私の母は彼女づきの小間使いに任命された。

大根おろしのように、身を粉にして動くことを、無益も利益もなく、めちゃめちゃに好んだ壮健至極な娘でさえ、ばかばかしいと思ったほど酷き使った。行処のない身寄りだから逃げてゆかないという信状で、驕慢の頂上にいた花菊は無理我慢の出来るたけをしいた。無論他の者へも特別優しかったわけではない。

彼女が芝居見物の日は、前の晩から家中の奥のものは徹宵する。暁方に髪を結ってお風呂にはいる。髪結は前夜から泊りきりで、二人の女中が後から燈をもっている。