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そうしゅん

早春

豊島 与志雄

「苦楽」1947(昭和22)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 20 页

青空文庫

つかつかとはいって来て、梅子の枕もとに坐って、早くおなおりなさい、きっとなおります、そう言って、両手をついてお辞儀をしました。可哀そうに、梅子が、ほろりと涙をこぼしたときには、もう室から出て行きかけていました。どういうんでしょうねえ。」

お母さんは立ったまま話したが、それきりで、病人の方へ行った。

北川さんは黙りこんで酒を飲んだ。そしておれにもすすめたので、遠慮なくおれも飲んでやった。

北川さんがへんに考えこんでるので、おれは気を利かせて、やがて出て行った。北川さんとなにか話したいことがあるようだったが、それも諦めて、忘れた。

それでも、やはり気になって、翌朝、行ってみた。

台所で、お母さんが食事の仕度をしていた。おれは梅の木を見に行った。朝日がいっぱいさしてるあちらの縁側の、硝子戸の中に、北川さんと妹さんが何か話していた。

おれは梅の木を見上げた。いろいろな思いが絡んでるので、身内のような気がした。

北川さんが硝子戸をあけて、おれを呼んだ。

「よく来たね。」

昨日と同じ挨拶だ。はればれとした顔をしていた。

だが、それよりも、おれはびっくりした。梅子さんがとても美しかった。