轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

そうしゅん

早春

豊島 与志雄

「苦楽」1947(昭和22)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 20 页

青空文庫

おれはそこにばかのように突っ立ってるのがつらくなって、お辞儀をして去ろうとした。すると、北川さんから呼びとめられた。

「実は、君にまた頼みたいことがあるんだがね。」

「ええ、なんでもしますよ。」

「おかしなことだが、あの梅の木なんだ。」

北川さんは暫く口を噤んだ。

「あれを君にあげるから、いいように始末してくれないかね。薪なんかにしてしまうのは可哀そうだから、どこかに植えて、やはり生かしといて貰いたいんだ。とにかく、あれをまた掘り起して、ほかへ移すんだ。費用は出すから、頼むよ。」

「あすこに置いといては、いけないんですか。」

「折角のものだから、貰い受けるつもりだったが、あんなことがあっては……。あの嫌な奴さ、あんな奴に汚されては、僕はもう嫌になった。話をすると、梅子も嫌だと言う。どこか遠くへ持って行ってくれよ。」

おれは首垂れてしまった。初めは意外だったが、その意外が意外でなくなり、北川さんや梅子さんの気持ちが、おれの中にもはっきり伝わってきた。

「分りました。」

おれはそれだけ言って、くるりと向きを変え、梅の木を眺める風をした。そして眼を手の甲でこすった。