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わせだかぐらざか

早稲田神楽坂

加能 作次郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页

青空文庫

漬物屋へ入って、つくだ煮や福神漬など買っているものもあった。

『どこの縁日でも同じだね。』と友達はむしろつまらなさそうにいった。

『まあそうだね、殊にここなんか子供相手が主で、実に貧弱なものだが、それでも縁日だというと不思議に人が出るからね。そしてあたりの商店でも何でも段々と自然によくなって行くからね。だから土地の繁栄策としては、どうしても縁日というものが必要なんだね。』と私がいった。『神楽坂にしたって、今日の繁栄を見るに至ったのは、そりゃ種々様々な条件や理由がそなわっていたからに違いないが、極最初は、矢張り毘沙門の縁日なんかが主として与って力があったんじゃないかと思うんだ。現に、今ではもう普通の日も縁日の日も区別が付かないようになってしまったけれど、僕が知ってからでも、元は寅と午との縁日の晩だけ特に沢山夜店が出て、従って人出も多く、その縁日の晩に限って、肴町から先が車止めになったような訳だったからね。その頃は僕なども、特に今日は寅毘沙だ午毘沙だといって、丁度今僕の子供等が手をつないで近所の縁日を見に行くように、友達を誘ったり誘われたりして早稲田の奥あたりから出て行ったものだった。