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めいあんよめもんどう

明暗嫁問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页

青空文庫

鉢の肌理

「ちょっと待て直二郎」

「もうひと言です、お笛の性質をよくごらんのうえ、もし御意に協いましたなら、私の妻に娶って頂きとうございます」

「とうとう云いおった、う……」勘太夫はもういちど眼鏡をむしりとった、そしてそれをまた掛け、拳を握って前方へつき出した、なんのしぐさかとんとわからない、要するに自分の胸中はこんな風だとでもいうのらしい、老人の額からぽたぽたと汗が流れだした。

鉢の肌理

「ななんという面の皮の厚いやつだ」勘太夫は溜息をつきながら幾たびも独り言を言った。だが断じていけないとは云わなかった、それにはわけがあるのだが、それはしぜんとわかってくるだろう。……直二郎は数日して、主君伊予守の供に加わって江戸へ立っていった。出立するとき彼はひと言、「お預け申しました」と云った、勘太夫は頷いて、「たしかに預かった、しかし預かった以上、万一ゆるし難き不始末でもあったら断わりなしに成敗するから承知しておれ」と大いに威を示した。

勘太夫の積りでは、どうせ若い直二郎のことだから女に云いくるめられて当座の熱をあげているのだろう、暫く離れていれば眼がさめるに違いない、そのくらいのことに考えていた。