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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
誘いの手
と眩しそうな眼をして云った、
「この次も茶うけには香物をたのむ」
えへんえへんと空咳をしながら、そそくさと母屋のほうへ去っていった。
誘いの手
こんなぐあいで梅雨もあけ夏もなかばを過ぎた、午後にひと雨あって、涼風とともに昏れた日の宵のこと、珍しくも茶室から三絃の音と、一中節の渋い唄ごえが聞えてきた。……なんと、寛ろいだ勘太夫がお笛を相手に、いいきげんで浅酌低唱をたのしんでいる、強いられて二三杯舐めたお笛も、眼蓋をほんのりと染め眸子をうるませて、たいそうなまめかしい姿をしていた。
「まあ一杯あいをせい」
「もう頂けませぬ」お笛は三味線を措き、片手で頬を支えた、「こんなに顔が熱くなっておりますもの、お酌をさせて頂きます」
「いい色になったな、わしも久方ぶりで快くなった。もう唄はやめにしてなにか話を聞くとしよう。こちらへまいれ」はいと答えてお笛はすなおに膝を寄せた。
「花むらにいた頃は小笛と申したか」
「はい、本名をそのままでございました」
「わしにはまるで記憶がないが、わしの座敷へは出たことがなかった」
「いいえ度たび」と云ってお笛は微笑した。
「それは迂濶だったな、武家風に堅く粧ってもこのように美しい