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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
とあとで臍を噛み、こんどは決してごまかされぬぞと肚をきめるが、彼の呼吸はいつもその裏をかいて、まったく防ぎようのない手でくるから敵わなかった。
もちろん、そうして金を持ちだすのといっても高の知れたものだし、千石の家計からすれば、騒ぐほどの問題ではない、勘太夫が心配するのは、その金が彼の身を誤りはしないかということだった、かつて若いころ「通人」などと云われただけに、遊びの徳も知っているが害も忘れてはいない、自分がはじめに伴れ出したのだし、もう二十五歳にもなるので、いまさら「遊ぶな」とも云えず、もしや筋のよくないおんなにでも惑わされたのではないかと思うと、勘太夫は心のおちつくひまもなく、これでは早く嫁でも取るよりほかに手はないと考えはじめた。
「もうそろそろ跡目のお届けもしなければならぬし」と、老人は用心ぶかくきりだした。うっかりすると金のほうへ持ってゆかれるので、なにか云うときの老人の用心ぶかさは格別である、「おまえの年も年だから、今日は金のはなしはいかんぞ、いや話は金のことではない、年も年だから、嫁を貰おうと思うが異存はないか、金はいかんぞ」