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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
新十郎はそれをいたわるように、やさしく、また彼自身もいたましげに顔をくもらせ、
「それは、どんなお声でしたか? 似たような声をおききになったことがありますか」
「いいえ、似たような声などとは、とても。ただ怖しい叫び声でした。思いだしても、身がすくむように感じられます」
「風守さまは駒守さまと同じような、岩のようなお体格でしたか」
「いいえ似ているところはございません。長いマントのようなものを身につけていらしたから、たしかなことは分りませんが、むしろ痩せて弱々しいお体格に想像されます」
「さきほど、風守さまは天才だと仰有いましたね。そのワケはなぜでしょう?」
「十一二から十八までの詩文のお作品を拝見いたしたからです。難解で正しい観賞はできませんが、そのように思ったのです。この奥の座敷牢に、まだソックリある筈でございます」
光子は無学をはじらッてか、顔をあからめて答えた。新十郎は彼女から訊きうるすべてを訊き終ったので、座敷牢へ案内してもらった。詩文の稿本はそッくり残っていた。
「風守さまの天才をゆっくり観賞したいと思いますが、しばらく拝借できましょうか。決して損んじたり失ったりはいたしません」