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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
私が言うべくして隠していた心事は大殿さまにイナズマの如くに閃いたのかも知れません。大殿さまはよろしいと申されて何のためらいもなくお立上りになると、ただちに別館へ赴かれ、アッと思うひまもなく火をかけて、お前は帰れ、何事も人に語るな、と言いすてて雨戸をとざしてしまわれたのです。それからのことは御承知の如くであります。蛇足として、すべては身に定った運命であると再び申し添えておきましょう。それが生きてきたすべてでもあり、死に行くすべてでもあります。
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海舟は虎之介の持参した英信の遺書を一読した。読み終えて、虎之介に手紙を返した。海舟の顔には安らかな色が現れていた。
「運命というものは、在るような、また、ないような、あまり当にはならないものだ。つらつら悲劇のもとをもとむれば、チッポケなかびくさい系図にとらわれた氏族の罰さ。眼を天下に転じて歴史の示すきびしい実相をみる目を忘れた罰なのだな。寛永寺へたてこもった乱暴者が、逃げるに際して御苦労なことに権現様の木像を背負い十字にからげて担ぎこんだ男がいたぜ。そんなものを、どうするのだえ。フロの焚物にするがいいや、と云ってやったら、刀をぬいて斬りこみそうな剣幕で怒りやがった。