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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

すべてが終ったあとにおぬいさんが受けるであろうその悩みと苦しみとを考えてみただけでも、心が寒くなった。不思議な女もあったものだと思うほかはなかった。不思議な自分の心だと思うほかはなかった。……それにつけても渡瀬はいらだった。

かまうものか、もっといじめてやれ。渡瀬は何んとなしに残虐なことをしてみたい心になっていた。そして自分で自分をけしかけるように、大ぎょうな表情を見せながら、

「それで泣くというのは変じゃありませんか」

とむりに追窮した。

「経験のないところに感動するってわけはないでしょう」

彼は自分ながら皮肉な気持の増長するのを感じた。

おぬいさんはほっと小さく気息をついた。そしてしばらくしてから、やや俯向いたまま震えた声で、しかしはっきりといいだした。

「これはただそう思うだけでございますけれども、恋というものは恐ろしい悲しいもののようにおもいます。私にもそんな時が来るとしたら、私は死にはしないかと今から悲しゅうございます。だもんですからああいうお話を読みますと、つい自分のことのように感じてしまうのでございましょうか」

この女は俺の説でも承ろうとするがいいんだ。