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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

「悪かったおぬいさん、僕が悪るかった。……僕はどうもあなたみたいな人を取りあつかったことがないもんだから……失敬しました。……僕はこんな乱暴者だが、今日という今日は我を折りました。……許してください。僕はこうやって心からあやまるから」

そういって、彼は几帳面に坐りなおると、膝の上に両手をついて、頭をちょっと下げた。彼はまったくそうした気持にされていたのだ。

何をどういったか、そのあとはよく分らなかったが、渡瀬はとにかく居心地がいやに悪くなって、尻から追いたてられるように急いでおぬいさんの家を飛びだした。

とっぷりと日が暮れて、雪は本降りに降りはじめていた。北海道にしては大粒の雪が、ややともすると襟頸に飛びこんで、そのたびごとに彼は寒けを感じた。

彼はとっとと新井田氏の家の方を指して歩いた。「ああいけねえ」と独りごちた。何んだか打ちのめされたようだった。力が抜けてしまった。ばかばかしく淋しかった。寒いように淋しかった。

「新井田の方はあと廻わしだ」そう彼はまた独りごちて、狸小路のいきつけの蕎麦屋にはいった。そして煮肴一皿だけを取りよせて、熱燗を何本となく続けのみにした。