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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

けれどもだ、俺はとにかく実行はしているぞ。哲学はその後に生れてくるものなんだ」

西山は軽薄という言葉を聞くと癪にさわったが、柿江の長談義を打ち切るつもりで威かし気味にこういった。

けれども柿江はほとんど泥酔者のようになってしまっていた。その薄い唇は言葉を巧妙に刻みだす鋭い刃物のように眼まぐるしく動いた。人見はいつの間にかこそこそと二階の自分の部屋に行ってしまった。

そこに園が静かにはいってきた。夜寒で赤らんだ頬を両手で撫でながら、笑みかけようとしたらしかったが、少し殺気だったその場の様子にすぐ気がついたらしく、部屋の隅をぐるっと廻って窓の方に行って坐った。

柿江はまだ続けていた。西山はもう実際うるさくなった。自分の生活とは何んの関係もない一つの空想的な生活が石ころのようにそこに転がっているように思った。

「寒いか」

戸外の方を頤でしゃくりながら、柿江には頓着なく園に尋ねた。

その拍子に柿江がぷっつりと黙った。憑いていた狐が落ちでもしたように。そしてきまり悪るげにそこにいた三人の顔に眼を走らすと慌てて爪を噛みはじめた。

「渡瀬君まだいたんだね。僕はもし帰ってしまうといけないと思ってかなり急いだ」