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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
送りに来た書生さんたちはと見ると、まるでのんきな風で高笑いなどをしながら遠くから冗談口を取りかわしたりして、思い思いに散らばっていってしまった。何んの気で見送りに来たのか分らないような人たちだと婆やは思った。白官舎の人たちも、柿江さんは夜学校の生徒の手を引いて行ってしまうし、そのほかの人の姿はもうどこにも見えなかった。
停車場前のアカシヤ街道には街燈がともっていた。おたけさんとはぐれたので婆やは三隅さん母子と連れ立って南を向いて歩いた。
「星野さんがお帰りてから何んとかお便りがありましたか」
と大通り近くに来てからお袋が婆やに尋ねた。
「何があなた。皆んな鉄砲丸のような人たちでな」
婆やはそう不平を訴えずにいられなかった。
「私の方にもありませんのよ」
とおぬいさんがいった。
大通りから婆やは一人になった。これでようやく帰りついたと思うと、書生さんたちはとうの昔に帰ってきていて、早く飯にしろとせがみたてるに違いない。これから支度をするのにそう手早くできてたまることかなと婆やは思いながらもせわしない気分になって丸っこい体を転がるように急がせた。
きゅうに手の甲がぴりぴりしだした。