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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

見ると一寸ばかり蚯蚓脹れになっていた。涙がまたなんとなく眼の中に湧いてきた。

*    *    *

おぬいは手さぐりで夢中に母にすがりつこうとしていたらしかった。眼をさましてみると、母は背面向きになってはいるが、自分のすぐ側に、安らかな鼾を小さくかきながら寝入っていた。

ほっと安心はした。けれどもどうしてこんないやな夢ばかり見るのだろうとおぬいは情けなかった。枕紙に手をやってみるとはたしてしとどに濡れていた。夢の中で絶え入るように泣いてしまったのだから、濡れていると思ったらやはり濡れていた。眼のあたりを触ってみると、右の眼頭から左の眼に、左の眼尻から鬢の髪へとかけて、涙の跡はそこにも濡れたまま残っていた。おぬいは袖口を指先にまるめてそっと押し拭った。それとともに、泣じゃくりのあとのような溜息が唇を漏れた。

覚めてから覚えている夢も覚えていない夢も、母にはぐれたり、背いたり、厭われたりするような夢ばかりなことはたしかだった。今見た夢もはっきり覚えていないのだったが、覚えていないのは覚えているよりもいっそう悲しい夢であるような気がした。

今のおぬいの身の上として、天にも地にも頼むものは母一人きりなのだ、その母がおぬいをまったく見忘れている夢らしかった。