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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
柿江はいやな夢でも見ているような心持になったが、どういうつもりだったか、奇怪にも我れ知らず笑いだした。大声を上げていつまでもげらげらと。女たちがそれをおかしがるとなお笑った。
柿江は大黒座を左に折れて、遊廓の大門を大急ぎで通り越しながら、こんなことを不安に満たされた胸の中で回想していた。
柿江は自分が何の気なしにすることが、どうかすると人には頓狂に見えて、それが一つの愛嬌にされているのを意識していた。あの時もそんな気持が動いていたのだなと思った。取り返しのつかないようないやな心持がした。どうせああいう種類の女だ。かまうものかとも思った。それから今考えても自分に愛想の尽きるような気持を起させるのはその翌日のことだ。眼を覚ますと、もう朝日がいっぱいに射していたが、小恥かしい気分の中で真先に意識に上ってきたのはガンベのあの醜い皮肉な片眼の顔だった。彼奴は憎々しいほくそ笑みを今ごろどこかで漏らしているのだろう。しかも話の合う仲間の処に行って、三文にもならないような道徳面をして、女を見てもこれが女かといったような無頓着さを装っている柿江の野郎が、一も二もなく俺の策略にかかって、すっかり面皮を剥がれてしまったと、仲間をどっと笑わすことだろう。