轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
山本周五郎『春いくたび』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春いくたび、だんまり伝九、伝四郎兄妹、峠の手毬唄、初午試合討ち、梟谷物語、武道宵節句。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 页
「そうです、伏見の戦でした、敵の砲弾にはね飛ばされて」
「伏見。……伏見の戦で砲弾に……」
月心尼は突き飛ばされたように身を退いた。忘れることの出来ない言葉である、それは既に遠い昔のことであった、秋の日盛りに訪ねて行ったあの村の青年から聞いて、もう三十余年の月日が経っている。……けれど月心尼の心にはまだ昨日のことのように生々しく残っている言葉だった。
「あなたは鳥羽で、鳥羽で戦ったのですね、鳥羽の戦で大砲の弾丸に。……それでは若しや、若しやあなたは、信之助さまではございませんか、清水信之助さまでは」
「信之助……清水……」
老人はけげんそうに首を振った、「……私の名は松本吉雄と云います、それに、……そういう名の人は知りません」
「よく考えて下さいまし」
月心尼は力を籠めて云った、「心を鎮めてよく思い出して下さい、あなたは信之助という名に覚えはありませんの? ずっと昔、霧のふかい朝、香苗という娘と別れたことはありませんの、必ず帰って来ると云って、また会う日の約束に辛夷の花を一輪ずつ、お互いに持ち合って別れたことはございませんか」
老人は眤と眼をつむっていた。