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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

久保田万太郎『春泥・三の酉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春泥、三の酉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 页

青空文庫

「分ってる。」田代のそういうのを押えて「御挨拶はしないがお目にはよくかゝっている。――小倉です。」

いっそ無愛想に小倉は頭を下げた。

「いゝえ、わたくしも、舞台では始終……むかしまだ常盤座においでの時分からお目にかゝっております。」

それにこたえて「うたむら」の主人は愛想よく会釈した。

「舞台のまんまの、舞台もふだんもちッとも違わない、気のいゝ、ごく大味な……」

すぐ、また、田代のそばからそういいかけるのを「黙ってろよ、うるさい。――酔ってるのか、もう?」

「酔ってる。――すこしいま酔って来た。」

「だらしのねえ。――酔ってなんぞいるんなら来るんじゃァなかったんだ。――急な用だというから出て来てやったんだ。」

「さ、まァ、一つ……」田代はそれにはこたえず「酔ったって、そんな。――酔ったってちゃんと、新派というものがこのさきどうなる、女形ってものがこのさきどうなる? ――旦那と、いまその研究をしているところだ。」

「ふん。」小倉はそれに乗らず小女に「姐や、おい、わたしには蟹をくれ。」

「ですから。――ですから、あたくし……」田代はそのまゝ話をもどして「考えました。