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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

久保田万太郎『春泥・三の酉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春泥、三の酉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 页

青空文庫

六

「そうなってからだ、しょッちゅう額に八の字をよせるようになったのは。」三浦はいった。「不思議に、今日は、はじめッからその八の字が出ていなかった。」

「いゝからまァ、飲め、たんとずッこけろ、若いうちはそのほうがいゝ。……驚いたよ、あたしァ。――何年にも、あたしァ、あんなさばけたことをおやじにいわれたこたァない。」

「うん、あれは俺も一寸おどろいた。――何をいい出すかと思った。」

「が、そのあとがいけねえ。――お前の半分でも若宮が飲んだらあんなこともしなかったろう、もっと外に思案のしようもあったろう。――あいつは一寸痛かった。」

わらって小倉はいった。

六

「けど。」田代はそれを遮るように「知ってるんだろうか、おやじは? ――分ってるんだろうか、おやじには?」

「何が?」

すぐ、また、三浦はいった。

「若宮君の死んだわけがさ。――どうして若宮君の死んだかゞさ。」

「嫌になったからよ。――生きてるのがいやになったからよ。」

「そんなこたァ分ってる。――生きてるのがいやになったから死ぬ、だれだってそんなこたァ分ってる。――こっちのいうのはその、なぜ、じゃァ、いやになった? なぜそう生きてるのがいやになった? ……それをいうんだ、あたしァ。