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はるかぜのふくまち
春風の吹く町
小川 未明
「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年4月7日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,346 字 · 5 页
」と、いい聞かせました。
金さんは、その後、遺言を守って、本屋の小僧さんとなり、よく辛棒をしました。そして、一人まえになってから、小さな店を持ったのであります。金さんは、親方も、自分のように、両親がなく一人ぽっちだったこと、気短で、しかられるときは怖かったが、人情深い、いい人だったことなど、思い出しました。金さんは、お仏壇に親方の写真を祭って、命日には、かならず燈火を上げて拝んだのです。
町の子供たちが、店頭に並べておく絵本や、雑誌をひろげて見ても、金さんは、小言をいいませんでした。子供たちが笑うと、自分も笑って見ていました。子供たちが帰ると、またきれいに、本を並べ直したのです。毎日のように店へ遊びにくる子供の中に、良ちゃんといって、ようすの貧しげな子供がありました。その子は、いつも金太郎さんの絵本を、きまって手に取り上げて、飽きもせずながめていました。そして、くまとお相撲を取るところへくると、うれしそうな顔つきをして、笑いました。
ほかの子供は、本を見てしまうと、そこへ投げ出していってしまうけれど、良ちゃんだけは、ちゃんともとのところへ置いて帰りました。