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はるかぜのふくまち
春風の吹く町
小川 未明
「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年4月7日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,346 字 · 5 页
良ちゃんの家は、病気のお父さんと、働きに出かけるお母さんとでありました。良ちゃんは、一冊の本も容易に買ってもらえなかったのです。
その日の晩でありました。仕事から帰ったお母さんが、良ちゃんをつれて本屋さんへやってきました。良ちゃんの顔には、泣いたあとがあって、昼間与えた絵本を抱いています。
「この子が、ご本をもらったといって持ってきましたが、ほんとうでしょうか?」
「ほんとうです。金太郎さんが、お好きのようですから、あげたのです。」と、金さんは、笑って答えました。
「ありがとうございます。それなら、いいですけれど。」と、お母さんは、喜んで、お礼をいって、帰りました。後からついていく良ちゃんの顔も、いきいきとしていました。
金さんは、かぜをひいて臥ました。店も半分閉めてあります。いちばん心配したのは毎日遊びにくる子供たちでした。
「おじさん、どこがわるいの。」
「おじさん、ご用があったら、お使いにいってあげるよ。」
いろいろと、上がりがまちから、奥の方をのぞいてなぐさめました。金さんは、うれしく思いました。日暮れ方には、良ちゃんのお母さんが、みまいにきました。