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はるかぜのふくまち
春風の吹く町
小川 未明
「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年4月7日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,346 字 · 5 页
「私には、はらんの実がいちばんきくのですが。」と、金さんが、苦しそうに、いいました。子供の時分にもはなはだしい熱のとき、親方が、らんの実を煎じて飲ましてくれて、なおったことを思い出したのです。
「らんの実ですか、さがしてあげますよ。」
良ちゃんのお母さんは、金さんのために、翌日、らんをたずねて方々を歩いたのでした。
一人のおじいさんがあって、らんのほかに、いろいろの薬草を作っていました。
「これは、去年生った実です。」といって、らんの実を分けてくれました。また、良ちゃんのお父さんの、胃の病気によくきくという草も分けてくれました。このとき、お母さんには、おじいさんの顔が、神々しく見えたのです。そして、他人のためにしたことが、かえって自分のためになったとうれしかったのであります。
吹く春風にどこからともなく、いい花の香りが流れてきて、林の中では、小鳥が楽しそうにさえずっていました。