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とけいやしきのひみつ

時計屋敷の秘密

海野 十三

「東北小国民」1948(昭和23)年5月~10月、「AOBA」(「東北小国民」改題)1948(昭和23)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,481 字 · 74 页

青空文庫

その人物は、両足を重いくさりでつながれていた。そしてそのくさりの一端から、また別のくさりがのびて、太い鉄の柱をがっちりとつかんでいた。

その人物は、昔西洋の僧侶が着ていたようなだぶだぶの服を着ていたが、すそは破れて、膝のすぐ下までしかなかった。そしてやせこけて骨と皮ばかりになった足首を、鉄のくさりがじゃけんに巻いていた。その人物は、顔にお面をかぶっていた。頭の上から口のところまで、まっくろになった重そうなお面をかぶっていた。あごから下はお面はなかったが、そのかわりに、とうもろこしのようなひげがもじゃもじゃと、のび放題になっていた。

そういう怪人物が、ガラス天井の上で、さっきから活躍していたのだ。

彼は見かけにあわない力を、そのかまきりのようにやせさらばえた身体からひねり出し、鉄の棒をてこにつかって、大きな土台石を動かそうとして、一所けんめいやった。

その土台石の奥には、すでに大きな穴が用意されてあった。それは多分この鉄のくさりにつながれた怪しい囚人が、ひまにまかせて、これまでに掘っておいたものであろう。土台石の一個が、ついにくるりと一回転して、奥の穴へころがりこんだ。