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じげんばくだんきたん
時限爆弾奇譚
海野 十三
――金博士シリーズ・8――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页
たおれてしまい、地上は忽ち阿鼻叫喚の巷と化し、土煙と火焔とが、やがて租界をおし包んでしまったこと、そして礎石の爆発よりホテルの完全倒壊まで約一分十七秒を費したという数字の方が、より一層読者の科学する心を刺戟することであろう。
それに引続いて、この租界では、大小三回の爆発があった。ホテルの礎石の爆発とを合わせて、四回の爆発があったわけだ。いずれも、それ相当の手応があったのであるが、ここではその詳細を一々述べている遑がない。ただ十二マイナス四イクォール八という算術に於て明かな如く、予想されたるあと八つの爆発は、ついにこの租界内では見聞することが出来なかった。
そのわけは、例ののこりの爆弾装填物が、装填後十五年もたった今日、この租界の外に搬出されてしまったのであるか、それとも時限器の狂いでもって、二十六日以後に爆発するのであるか、そのへんははっきりしない。いずれにしても、租界の住民たちは、二十六日が去って一安心したものの、まだ枕を高くして睡ることは出来なかった。そしてそれからというものは、市民たちは暗いうちに起きて、慄えながら戸口に佇み、新聞が戸袋の間から投げ込まれると、何よりも先ず、その日の紙面に、金博士の広告文がのっているかを確め、しかるのちまた寝台にのぼって、改めてすやすやと睡りを貪るという有様だった。