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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

には、

「おい、日本人の名誉にかかわることが起ったんだ。われわれは今夜八時に、ウィード飛行場から出発だぞ」

突拍子もない話である。日本人の名誉に拘るとはいかなる事件が起きたのか、私には皆目呑こめない。

「何が日本人の名誉にかかわるんだい」

私は、安楽椅子に腰を深く下ろしたまま、ウェルスの小説本の続きを読みながら、たずねた。

「それは、こうだ。ええと、どういったらいいかなあ」と、白木は、妙に考え込んだ。

「そうだ。つまり、敵性国イギリスの息の根を徹底的に止めちまうことについて、なんだ。かの三国同盟の精神の故であるは勿論のこと、我々日本の当面の敵としてだ。ところで、その徹底的――いいか徹底的だぞ、徹底的に息の根を止めるには、われわれが出馬しないと、どうしても駄目なんだ。だから今夜出発だ。どうだ分ったろう」

白木の話は、何を指しているか、さっぱり分らなかった。何か曰くのあることらしいとは感づいたが、それを根掘り葉掘り聞くとなると、白木が今夜のような態度のときには、きっと変にからまってしまうのが例だった。日本を放れてはるばるこんなところへ来ている二人組の間に、気拙いことが起るぐらい面白くなく、そして淋しいことはないので、こういう時には、結局ワキ役である私の方で気をきかせて譲歩し、彼の我儘を認めてやる事にしている。