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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
かよう考えて来ると私はもう、自分の考えに堪えられなくなって、思わず遺書をパタリと閉じて、机の上に置いた。居住居を正して少年に問いかけた。
「……成る程……わかりました。しかし君は今しがた、お母さんが何者にか殺されたと云いましたね」
「ハイ……」
少年は依然として淋しそうな顔を上げた。その睫は涙のために乱れていた。しかし言葉はハッキリとして落ち着いていた。
「ハイ……申しました」
「……その事実はどうして解ったのです」
「だって……生きている筈がないんですもの……」
と云ううちに少年は又も力なくうなだれてしまった。
「……ハハア……それじゃ、お母さんからのお消息が、それから後ちっともないのですね」
少年はうなずいた。
「……成程。君が曲馬団に居るとすれば、お母さんが何等かの方法で会いに来ない筈はない。すくなくとも無事で居る事を君に知らせない筈はない。それが何の頼りもないところを見れば誰かの手にかかって殺されておられるに違いない。しかも誰かの手にかかって殺されているとすれば、その手はW・ゴンクールの手に違いない……という三段論法が成立する訳ですね」
少年は前よりも強くうなずいた。