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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
少年の言葉は益出でて益異様である。しかしこのような余り人の知らない内情を知っているからには作り事ではないらしい。のみならずこの少年が純粋の日本人らしいという事は、故郷の新聞を懐かしがる行為と、その軽快な混り気のない発音で、もはや殆んど確定的であると考えた。同時にその簡潔を極めた要領を得つくした説明ぶりに、又もや感心させられてしまった。
「ははあ……そんなに日本が懐かしかったのですか」
「はい。そればかりではありません。私はずっと前から日本語を勉強しておりまして、日本文字のものならば印刷したものでも書いたものでも何でも構わずに集めておりました。その中でも日本の新聞は、日本の事を研究するに一番都合がよかったのです」
「ふむ。……ではその広告が眼に止まった理由は……」
「私は……貴下に雇って頂きたいのです。……あなたは……まだ……助手を……お持ちに……ならないのでしょう……」
少年はこう言って急に口籠もりながらじっと私の顔を見た。その黒い瞳は熱誠にまばたき、その白い頬は見る見る真紅に染まって来た。その一瞬間、私はこの少年の美しさで全神経を蔽われたような気がして眼を瞑ったが、やがて又見開いて見ると、少年はいつの間にか伏目勝ちにうなだれていた。