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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

「はい……。これから行かれるのでございます」

「それではシムラ・ノブコは生きているのですね」

「はい」

「どこに……」

「あなたの曲馬団の中に……」

「ヒホ――オオ……」

「私は嬢次様に紹介して頂きました」

「……フホ――オオ……」

とストーン氏はいよいよ眼を丸くした。いかにも相手を子供扱いしているかのように、ニコニコ笑い出しながら……。

「……ホオオオ……それは……ミセス・シムラは何という名前になっておりますか」

「……アスタ・セガンチニ……一番初めのプログラムに出ておいでになります。地図を読む馬の先生……」

「アッハッハッハッハッハッハッハッ……ワッハッハッハッハッハッハッ」

ストーン氏は又も堪らなく噴き出した。今度こそはとてもたまらないという風に、大きな腹を両手で押えて、文字通りに腹を抱えながら右に左に傾き笑った。

「ワハハハハハハハハハハ……お伽話だ……地底の蜃気楼……アッハッハッフッフッフッ……アスタ・セガンチニ……あの近眼婆さん……オースタリ人の志村のぶ子……アハハハハ。馬の先生……ウハハハ……」

けれども今度の笑いはそう長く続かなかった。ストーン氏はそうやって笑っているうちに、女の欺され方があんまり非道いのに気付いたらしく、急に顔を撫でまわして、真面目な態度に立ち帰りながら問うた。