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しょさいをちゅうしんにしたいえ

書斎を中心にした家

宮本 百合子

「住宅」住宅改良会、1922(大正11)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,739 字 · 8 页

青空文庫

けれども、斯うやって、電車の音のする、古い八畳で、此を書いている以上、今までのすべては、全く私の理想だけであり、或は、空想だけで終るかもしれません。

それは、暇な時には、随分想像を逞しくして、あんな家、此麼家と、考えを廻します。又、何かで肝癪が起り、周囲の物音や、風で吹込む塵までひどく気になるような時は、どんなにでもして、独りで、じっと納っていられる部屋が欲しいと熱求します。

けれども、真個に、部屋なら部屋、机なら机を有効に用っている時――仕事の出来る時――は、まるで家のことなどは忘れ切り結局、その為に、あくせくすることは無くなって仕舞います。

なかなか家などは建てられませんでしょう。少し考えれば、建てられても自分の所有のためには建てないかも知れない。

私は、何も、「自分のもの」とする必要は些も感じていないのですから、金持の土地のある人が、もう少し心持よい貸家を、安全な、リーゾナブルな条件の下に貸して下されば死ぬまで其処にいます。

何でも物が、あまり端的な売買関係にあると、全く人間的感興の欠けたものとなって仕舞う通り、「家」と云うものに対する我々の心持も、あまり、コムマアシャリズムに堕したくないものと思います。