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しょもつをあいするみち

書物を愛する道

柳田 国男

「書物新潮」1940(昭和15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,750 字 · 12 页

青空文庫

是に対する弁疏も、決して耳を傾けるに足らぬものでは無い。第一に出したくても適当なものが無いのだから致し方が無い。第二に読者が此方を求め、現に盛んに売れるのだから出す。この二つの理由は共に今日に於ては十分成立する。自分もそれを尤もだと思えばこそ、改めて深く考えて見ようとするので、もしそういう事情も無いのに、こんなことをする者があったら、そいつはもう話にならないのである。世の中の傾向というものには、事情を聴いて尤もでないものなどは一つでも有りはしない。それを一々諒として異議を挾まずに居たら、先ず新らしい社会は生れる望みが無かろうではないか。

本が日本に有り余るほど出て居ることは、種々なる方面から立証し得られるが、斯く申す自分なども、最初には欲しいものの集めきれぬことを歎き、中頃は選択の標準の示されぬを憾みとし、今は又読まねばならぬものの読み尽されぬことを悲しんで居る。つまりは一生涯、書物の豊富に苦しめられ通したのである。斯ういう中に於て、国内には適当なるものが得られないということは、そもそも何を意味するであろうか。それを先ず静かに考えて見る必要があるようである。