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しょかん(に)

書簡(Ⅱ)

寺田 寅彦

「アララギ 第廿六巻第一号 アララギ二十五周年記念特別号」1933(昭和8)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,327 字 · 3 页

青空文庫

拝復。始終『アララギ』を送って頂いておりながらほんの時々しか読んでいないので甚だすまない気がしております。今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤な御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありますからほとんど何も申上げる材料はないのでありますが、せっかくの御すすめでありますから、ただほんの少しばかり思い付いたことを申上げたいと思います。

私ども平生自分で歌を作っていないものにとっては、ただ一本立の歌に対する興味はどうしても薄いようであります。しかし連作風に数首を連ねたものには、一種不思議な興味を感じさせられます。一首一首の巧拙などはもちろんよく分らなくても、全体として見たときに感ずる一種の雰囲気のようなものがあって、それが色々暗示を与えるからであります。連作にもいろいろありましょうが、例えば雪なら雪をいろいろの角度からいろいろの距離で眺めたものも面白くないことはありませんが、しかし私どもにはそういうのよりも、むしろ、表面上何の関係もないような多種の影像が連立していて、叙景や抒情が入り乱れ、時々思いがけもないようなものが飛び出して来る方がどうも面白く感ぜられます。