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つきよとめがね
月夜と眼鏡
小川 未明
「赤い鳥」赤い鳥社、1922(大正11)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,679 字 · 8 页
このとき、また外の戸をトン、トンとたたくものがありました。
おばあさんは、耳を傾けました。
「なんという不思議な晩だろう。また、だれかきたようだ。もう、こんなにおそいのに……。」
と、おばあさんはいって、時計を見ますと、外は月の光に明るいけれど、時刻はもうだいぶ更けていました。
おばあさんは立ち上がって、入り口の方にゆきました。小さな手でたたくと見えて、トン、トンというかわいらしい音がしていたのであります。
「こんなにおそくなってから……。」と、おばあさんは口のうちでいいながら戸を開けてみました。するとそこには、十二、三の美しい女の子が目をうるませて立っていました。
「どこの子か知らないが、どうしてこんなにおそくたずねてきました?」と、おばあさんは、いぶかしがりながら問いました。
「私は、町の香水製造場に雇われています。毎日、毎日、白ばらの花から取った香水をびんに詰めています。そして、夜、おそく家に帰ります。今夜も働いて、独りぶらぶら月がいいので歩いてきますと、石につまずいて、指をこんなに傷つけてしまいました。私は、痛くて、痛くて我慢ができないのです。血が出てとまりません。