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あさおきのひとたち

朝起の人達

佐々木 邦

「面白倶楽部」1925(大正14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,511 字 · 14 页

青空文庫

「斯ういう雄大な景色を見ていると清々する。この上親父の凸凹頭を撲ってやったら何んなに好い気持がするだろう。銭勘定の外何にも分らない怪物は浅ましいね」

「まあ、又そんなことを仰有って」

と細君は近くにいた私を憚るようだった。私は遠慮して間もなく立ったから、この若旦那が何うして親父の頭を撲りたがるのか分らずにしまった。

ところが昨日の朝、フラ/\とやって来て突如私のベンチに腰を下したものがあった。見ると例の若旦那だったから、私は好奇心を動かした。

「何うです。壮観じゃありませんか?」

と先方から話しかけた。

「綺麗ですな」

と私は快く応じた。公園の連中には愛想を尽かしていたが、この眉目秀麗の青年はこの間見かけた時から妙に私の心を惹きつけた。

「あなた、斯う凝っと大自然に直面していますと、何か音のない声で説法をされているような気がしませんか? 実際一種の交響楽が押し迫って来ます。少くとも利益本位の人間生活が浅ましくなりますな」

と言うのも嬉しかった。この間のように親父の凸凹頭を撲りたがるのでないから、

「実際そんな感じがありますね。それが薬になると思って、私も毎朝来るんです」