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みらいのてんさい

未来の天才

豊島 与志雄

「人間 第三卷七月號」人間社出版部、1921(大正10)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,630 字 · 38 页

青空文庫

同じことを何度もくり返したようだった。そして何時のまにか私達は、彼女の家の方へ戻ってゆき、その前を通り越してなお歩き続けた。霧に鎖された狭い世界の中で、私達はただ二人きりだった。彼女は黙って私の言葉に耳を傾けていた。そしてしまいに、父に願って私のためにポーズしようと誓ってくれた。それからなお私達は、種々なことを誓い合った、愛や未来や其他を。

二度目に家の前を通りかかった時、彼女は急に立ち止って云った。

「余り長くなると父が心配しますから、またこの次にね!」

そのねに彼女は力を入れて、首を斜に少し傾げながら、じっと私の眼を覗き込んだ。私は承諾せざるを得なかった。固い清い握手を交して別れた。彼女は一寸待った。にこやかに微笑んだ。それからつと身を飜して、足早に去っていった。

彼女の姿が霧の中に吸い込まれてしまってからも、私はなお暫く其処に佇んでいた。それから急に寒さを覚えた。あたりがしいんとしていた。霧が少し薄らいだようなのに、夜の闇が大変濃くなったように感ぜられた。もう可なり遅いらしかった。

私はすぐに家へ帰った。お上さんが向うの室から何か云いかけたのを、階段の途中でただ「ええ。