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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
「人間 第三卷七月號」人間社出版部、1921(大正10)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,630 字 · 38 页
まるで悪夢にでも魘されたような心地だった。何にもはっきりしたことが考えられなかった。頭の奥にきらきら光った物が入り乱れていた。そして何時の間にか眠ってしまった。
翌朝、可なり遅くまでうとうとしてる所を、河野に起された。河野は私の枕頭につっ立って眼を見張った。
「まだ寝てるのか。いくら君が寝坊だからって、今日は早くから起き上ってることと思っていた。」
私はぼんやり眼を見開いた。容易に起き上る気になれなかった。頭も身体もがっくりして重苦しかった。
「僕はも少し寝ていたいんだが……。」と私は云った。
「そうか。では僕は失敬してもいい。別に用があって来たわけでもないから。」
そして河野は帰っていった。
私はそれだけのことを、夢の中ででもあるようにぼんやり意識した。河野に済まない気がした。そしてほんとに眼を覚した。起き上ると、頭がくらくらした。明るい日の光りが天に地に一面に漲っていた。それをじっと眺めていると、凡てのことがはっきり私に分ってきた。憂いや慴えはみな夜の惑わしだったのだ。輝かしい太陽の下では凡てが肯定される。私は微笑みを以て、指輪と反物とを贈ったことが追想された。