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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

こんど米良へいったら、よく姉に口止めをしておこう、と平五は思った。

四月、五月、六月と、無事に日が経っていった。木挽町では兄の敬二郎に三番めの子が生れ、神谷町の木下では女のふた児が生れた。平河町の森で、六月下旬に老母が亡くなったが、木挽町から看病にいっていた母のいつ女が、実母の死にまいったものか、葬儀の日に倒れたまま、七月いっぱい森家で病臥した。その三十余日のあいだ、平五は毎日いちど平河町までみまいにかよった。ただみまいにゆくだけではない、菓子とかくだものとか、兄嫁の作ったたべ物などを持たされるので、ちょうど残暑にかかる暑いさかりだったし、木挽町と平河町を毎日往復するだけでも相当こたえたが、それでも三日にいちどは、たいてい越中堀の清鑑堂へまわった。あるじの清兵衛は午後はたいてい店にいるが、留守のときでも女房を相手に、店の品をあさったり、むだ話をしたりして帰る。清兵衛夫妻はそれを仔細ありとみていた。つまり平五がそんなふうに来て時間つぶしをするのは、細江の娘が来はしないかと待っているのに相違ない、というのである。

「もちろん嫌いじゃあないさ」と平五は正直に答える、「しかし嫁に貰えないのにじたばたしたってしようがないじゃないか」