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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

「まさか、本物じゃあないでしょうね」

「まさかね」と平五は苦笑した、「しかし相州物の古刀に似ていることはたしかだ、うん、ことによるとこいつでいけるかもしれないぞ」

「すると、正宗ということに」

「それはむりだが、貞宗か義広だな」平五は云った、「銘のないのは修業ちゅうの作だとすればいい、この刃のぼうとうるんだところや、刃文のおおらかさは古刀の風をよく写している、よし、伝貞宗とおどかしてやろう」

「引取って下さるんですか」

「三分で買おう」

「それはあんまりですよ、現に二分二朱で買ったのを御存じじゃありませんか、お役に立つんなら少しは儲けさして下さい」

平五は首を振った。これは値で買うのではない、寄合に出してめくら共をびっくりさせるだけだし、あとは用がないのだから、三分でいやならやめるばかりだ、と平五は云った。清兵衛はねばった。細江から買う物はたいていねかしたままで、いつも、女房にがみがみ云われるが、あの母娘が気の毒だからつい買わずにはいられなくなる。若旦那もまんざら知らない相手ではなし、こんなときくらい少しは助力してくれてもいい筈である。そんなふうに清兵衛はくどいた。