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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

「見せたよ」と主殿が答えた、「多賀という人が鑑定家とは知らなかったし、平河町もなにも云わないものだからね、鑑定家だと知っていたら見せはしなかったろうが」

「こんなことになろうとは夢にも思わなかったんです、どうか堪忍して下さい」

「いやちがう、そうじゃないんだ」と主殿は手を振った、「そうじゃない、あやまる必要なんかない、あれは本物だそうだよ」

平五は吃った、「なんですって」

「こういうわけなんだ」

主殿は汗を拭きながら語った。多賀勘右衛門はその短刀を二度見た。いちどはすっと見ただけだったが、他の刀を二三見たあとで、もういちど拝見したいと云った。二度目にはあらたまった態度で、丹念にうち返し眺め、中心もよくしらべたうえ、「ふしぎだ」と幾たびも口の中で呟いた。それから、研ぎにかけてみなければはっきり断言はできないが、これは貞宗ではなく、新藤五か、ことによると正宗だと思う、と云った。

「無銘である点が、おそらく正宗だろうと思われる、と云われたのだ」と主殿はまた汗を拭いた、湯あがりの汗ではなく、そのときのことを思いだした汗のようである、「刃文のどこやらは新藤五にそっくりだが、すがたのざっくりとしておおらかな味、しかも高い気魄のこもっているところは正宗の作に相違ないと思う、そうくり返して云って、ともかく自分の手で研いでみたい