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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう

本州横断 痛快徒歩旅行

井沢 衣水

「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页

青空文庫

▲将軍、またもや馬を救う

中の茶屋で昼食。出かけるとまたもや烈風強雨。その中を冒して突進、不動坂を駆け上がるのが髯将軍、早くも胸つき八丁の上に方りてまたぞろ雨中でウエーウエー。

猛烈の雨中突進、遮二無二登りつめれば中禅寺の八丁平なり。ここから華巖の滝壺を見に行った。この滝壺道というのは、五郎平爺が十三年の日子を費やして独力造り上げた道である。惜しいかな、この老爺、今年四月病いを得て死んでしまった。

雨中を冒して、将軍と吾輩勇を鼓して五郎平茶屋より一丁あまり、懸崖路なき所を下りて、滝壺探検と出かけた。雨水を含んでいる岩角はウッカリすると墜落して手も足もかけることが出来ぬ。木の根岩角に手をかけ、足を踏みしめて、ようよう飛沫雨のごとき中に下り立ちて、巨巌の上へ登り、海内無双の大瀑布、華厳の雄姿を眺めた時には思わず快哉三呼。

足の皮を摺りむいて五郎平茶屋へ這い上がる。

▲将軍、またもや馬を救う

いよいよ中禅寺湖畔へ出た。湖面暗くして波浪上らず、雨脚矢のごとく湖上を打つ。毛唐の乗ったボートは橋に引掛かり、対山の翠は雨雲に包まれて、更に一鳥の飛ぶを見ず。商賈戸を鎖して風雨いよいよ烈しく、冷気肌を襲うてなんとなく物凄い。