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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
▲ヤッ断橋!
第一に飛び込んだる髯将軍、オットセイと称して浴槽の中へ仰のけのまま跳り込み、頭から、足からザブンザブン飛び込むこと十数回、危うく浴構内の土左衛門さんとならんとせしところを三人して引挙げ、ようやく事なきを得た。将軍浴場内に大の字に成ってへた張ったところ、三人して頭からガジャガジャ冷水の洗礼を見舞うとこ、たちまち家屋を震動せしむるウエーウエーの大声を連発する数回。宿屋の番頭殿びっくりして飛んで来て、眼をキョロキョロさせながら、
「何でございますえ、今の声は」
痛快痛快。
▲ヤッ断橋!
翌朝強力を雇って宿を出発したのが七時。これからいよいよ高原越え、元気はますます加わる。塩原古町から一里ほど人里放れた山の中を行くと新湯に出る。ここらでチョイトひと休み。山間の僻村、人皆淳朴で、休んだ大黒屋旅館も気持のいい家であった。これからは殆んど人の歩るいた事のないような谷合を通り、前黒山、釈迦ヶ岳の山の中腹を迂回して深林の薄暗い中を行くのである。幸にも晴天だからいいようなものの、これが雨降りでもあったものなら、たまったものではない。熊笹は人の身の丈を没すという深さ、暗い林の遠くには気味の悪い鳥の声がして、谿川の音は物凄いように樹立の間に唱っている。